レビュー: 『宇宙よりも遠い場所』を最終話まで見た

数年に1度出るか出ないかの大傑作だ。いいから見ろ。そして涙せよ。

 

幼馴染との共依存という鎖を引きちぎって旅立った者。母が消息を絶った南極へ行かねばならぬと、孤高を厭わずがむしゃらに突き進んできた者。裏切りと人の醜さに絶望し、孤独を選んで生きてきた者。そして、芸能人であるがゆえの孤独に苛まれてきた者。4人の少女のそれぞれの傷が、ともに大冒険する仲間の中で癒されていく。この旅を経て、彼らは少し大人になる。自分の足で立ち、未来へと駆け出していく。

 

彼らを守り、そして導いた大人たち。その大人たちにとっても、この旅は再生の物語となった。3年前に起きた、取り返しのつかない出来事。十字架を背負い、酷く傷ついた心を抱えながら、彼らはそれでも突き進んできた。亡き友のため、そして何より自分自身のために。周囲に馬鹿にされようが、迷いなどしない。その姿は、少女の1人と重なるものでもあった。

 

もしかしたら本放送では、観客にとって5話と6話が分水嶺になったかも知れない。初見ではこの2話の真価が分かりにくいのは事実。怒涛の勢いの後半は、ここを乗り越えた観客だけに与えられるご褒美となった。実際には、これらは後半への大事な布石だ。5話は、共依存にあった2人が共にそのくびきを断ち、対等な友人として関係を再構築するエピソード。そして6話は、人を信じられなくなった少女が、自分のために身体を張ってくれる絶対に裏切らない友がいることに気づかされるエピソード。

 

本作を「所詮はタナボタの旅じゃないか」と批判する向きがあるかも知れない。けれど、これは雛鳥たちの巣立ちの物語だ。彼らだけではなし得るはずもない大冒険も、年長者の導きと庇護のもとなら可能である。古来、若者たちはそのような体験を経て一人前になるのである。